“黒酢ブーム”以来、さまざまな黒酢商品が登場しましたが、黒酢の元祖”壷作り黒酢”があるのは鹿児島の福山町だけです。
壷造り醸造酢
皆さんも桜島を背景にずらりと並んだかめ壷をテレビなどで一度は見たことがあるのではないでしょうか。これは鹿児島県霧島市福山町でみることができるお酢造りの風景です。お酢は一般的に室温、湿度等の管理が行き届いた工場で生産されますが、福山黒酢はアマン壷と呼ばれるかめ壷の中で造られます。黒酢が別名、壷酢(つぼす)と呼ばれるゆえんです。
屋外醸造場に並べられたアマン壷はすべて自然の管理下に置かれています。もちろん、ただ屋外に放置するだけでは黒酢はできません。太陽、風、雨、雪。これら変化に富んだ厳しい自然環境の元で、黒酢にならしめるのが卓越した黒酢造りの名人、黒酢杜氏の存在です。この壷造り醸造による製法は日本はもちろんですが、世界でも唯一と言われており、ここ福山町では200年も前から引き継がれています。
鹿児島福山 黒酢の歴史
鹿児島福山黒酢の歴史は古く、江戸時代後期の1800年ごろにさかのぼります。江戸の藩政時代から、重要な商業地であった福山町は黒酢の原料となる良質な米ときれいな湧き水、そして温暖な気候に恵まれており、黒酢造りには最適の町でした。
この環境に着目した商人竹之下松兵衛により黒酢造りが始められたとされていますが、別説では「山川(鹿児島県揖宿郡)や日置(鹿児島県日置郡)の杜氏が伝えた」 「中国大陸から伝わった」とも言われています。
福山黒酢の特徴
福山黒酢は屋外に置かれたアマン壷の中だけで醸造されるため、一般的なお酢よりも長大な醸造期間が必要となります。黒酢に関するJAS法制定後、工場で24~48時間という短時間で造られた商品も黒酢と呼ぶことができるようになりましたが、黒酢の平均的な醸造期間は半年から1年と言われています。
当醸造元の「桷志田(かくいだ)」はその倍以上の2年~5年もの醸造期間を費やしています。酢造りは酒造りから発展したといわれていますが、ワインやウィスキーと同じように長期熟成が進んだ黒酢は味や香りの円熟度が増していきます。そのため福山黒酢は一般的な無色透明の米酢に較べても美しい琥珀色をしており、また香りもよく、味はまろやか、かつ芳醇です。